大工の手取り
「一人前になったら一か月50万やる」。これが親父の殺し文句でした。この言葉に幼かった僕は「マジか! そんなに稼げるんか!」と鼻息荒く興奮して、あれやこれや買える買えると妄想を膨らませたもんです。
って、50万いつになったらくれるんじゃ~っ! と、親父に殴りかかった二十代前半。雇われ大工で50万もらうって結構すごいことなんじゃ? と気づき始めた二十代後半。
そして三十代で経理、広告営業、税理士と相談、などなど工務店の経営を実際にするようになって、大工に手取り50万出すってむちゃくちゃ大変だと知りました。
そもそも息子の人生をお金で釣って扇動しちゃう僕の父は、かなりダメな人だと思いますが、おそらく一人前の大工になれば毎月50万くらいは稼げるよ、くらいの腹づもりだったのでしょう。ついつい大きいこと言っちゃったのよね。いかにも職人らしいです。
さあ、独立して所謂一人親方として叩いている現在。実際に大工の私はいくら稼いでいるんでしょう?
結論から申し上げますと、可処分所得で毎月平均45万程度です。手取り45万。
う~ん。これが大工の中で低いのか高いのか、というと、働き方によるのですが、僕のようにto Cの仕事をせずにto Bだけでやってる職人としてはマシな方だと思います。
だがしかしだよ、だから50万に届いてないんだってば!
みなさん、これが大工の現実ですよ。ちなみに僕は一切外注や他の大工さんに仕事を任せておらず、完全にロンリーウルフです。個人的に大工一人で稼ぐにはほぼ限界に近い金額だと思う。
物価の高騰が続いていますが、少なくとも僕の周りで職人の単価が上がる気配はない。昔はしょっちゅう組合でデモとかあったんだけどね。
あ、だけど誤解なきよう、というか大工を目指す人のために言っておこう。
大工は仕事が途切れずに取れれば、現代の日本で貧乏することはないと思います。それと、大工の仕事はつまらないものではありません。超楽しいかというと、そこまでは楽しくないんだけど、つまらなくはないくらいの感じ。
やりがいがあるかどうかなんて、自分のものさし次第だからわからんけど、どんな仕事でも感謝されれば嬉しいと思う。そういう意味で言うと、大工は感謝されやすい仕事でもあるね。作ったものが見えるから。
ま、それでも僕はここで毎日愚痴ってるわけだから説得力ないんだけど。