職人の仕事はジコマンか?
職人界で絶大な効果を発揮するホメル系の魔法。恥ずかしながら僕も職人の一人なので実はこの魔法にめっぽう弱いのです。
大工は基本的に一人で仕事をすることが多く、褒められるような機会は少ない。それに職人の仕事の良し悪しは同業の職人にしかわからないことが多く、客観的に判断しにくいからね。
「うわ~これすごくよくできた~」って本人が思っていても、それがお客や管理の人間に伝わることはまずないっす。さみしっ。
「職人のこだわりなんてジコマンだ」と言い切る某リノベーション会社の若社長が横浜にいます。彼は工期死守のマンション再販業者の下で施工を請け負っているのですが、僕ら職人に対して「仕事にこだわったりバカ丁寧にやるのは意味ないから」とハッキリ言う。
おいおいおいおい。大丈夫かいな・・・。
確かに職人の仕事上のこだわりや腕前は、やっぱりその道の知識や経験がないとわかりにくい。この若社長はお客にはわからないことだから意味がないのだ、と主張。
でもね。こだわりだけが強くて工期を守れない職人に腹が立つのはわかるけど、いやしくも施工会社の社長が技術や仕事上のこだわりを否定するようなことを言ったらアカンよ。
たとえば、板を一枚貼るとして、その板が一ミリでもずれていないかどうかを大工は気にします。ものすごく細かいことのように思えるかもしれないけど、その一ミリが後々ひびくことを大工は知ってるんです。だからぱっと見はわからなくてもこだわる。
または、木材を一本立てるのに対して釘一本でも倒れないけど二本の方が丈夫。だから二本打っておいたほうが安心、などなど。こういう時、確かに「俺は丁寧で気の利く職人だよな」と思ったりしながらやってます。これらをジコマンだと若社長は断罪してるのよね。
それは絶対に違うよ。そもそもジコマンと略される悪い意味での自己満足って、他人や環境に迷惑をかけているか否かが基準でしょ。路上喫煙とか爆音バイクとか歩きスマホとかジャイアンリサイタルとかね。
工期の範囲で仕事上のこだわりを見せる職人の自己満足はむしろ歓迎すべきものだし、技術が売り物の職人にその技術の見せ所を否定するようなことを言うなど笑止千万。技術は人の生活を豊かにするためにあるんだからさ。
いい機会だから言っておくと・・・
技術は人の生活を豊かにするもの。
芸術は人の心を豊かにするもの。
です。これは覚えておいて損はないぜ!
「ダンスなんてジコマンだろ」と言っていた僕の兄に芸術を理解することはできないんだろうね。
「いやいや、モジゃさんお疲れ様で~す」
「あ、社長。お疲れ様です」
「しかしモジゃさんは仕事が早くて丁寧ですね~。ホント助かってます~」
え? え? え?
ちょっ・・・
おまっ・・・
ったく・・・
んなっ・・・
「そ~お~? そんなことないですよ~、はははは」
って実際なっちゃうんだけどね・・・。褒められると弱いのよ~。