大工、一日中一人です
毎年、年末にだけ会う友人に諭すように言われたことがあります。
「一日中一人でいられる仕事なんて天国だからね」
そうです。大工の一人親方である僕は基本的に一人で現場を叩いているので、一日中一人なんです。
当たり前のことすぎて意識していなかったのですが、友人に言われたことによってこの事実について考えるようになりました。
確かに戸建てだろうがマンションだろうが大工は一人でいる時間が長い。一般的にあまり知られていないことなので超ざっくり説明すると、大工が20人工かかるような現場なら設備・電気工は5人工くらい、クロスは6人工くらい、他のユニットバス、ガス、キッチン等の施工は1人工がセオリーです。てなわけで、大工が圧倒的に長い。※人工=職人1人の労働1日分
言うまでもなく現場にもよりますが、基本的に大工は他の職人よりも現場に常駐する期間が長くなります。なので自然と一人でいる時間が多くなる。一日の間で会話する人と言えば建材や設備機器の配達員くらい。誰とも話さない日も多い(家では話すよ)。
会社の人間関係ですり減らしているのか僕の友人はこのことを「とても恵まれている環境」だと言い、「そんな仕事で喰えているお前は幸せだ」と説教フルコンボを叩き込んできました。わかったわかった、あたしゃしやーせものだよ!
ところで、なぜ友人とこんな話になったのか。僕がこんな話をしたのがきっかけなんです。
「大工は一日中一人でいることが多いからさ、なんか会話とか言葉とか忘れちゃいそうだよ」
と話したら、冒頭の返事が来たわけです。会話とか言葉とか忘れちゃうっていう部分を僕は広げたかったのだ。今ここに書くぞ!
僕は幼い頃から実家の工務店に出入りするたくさんの大工さんを見て育ちました。んでね、年配の大工さんは僕が子供だからってのもあるけど無口な人が多かったんです。
無口かつ口下手な人が確実に多かった。そんな大工たちは口下手なので僕が質問すると嫌なのか怒り口調になる。その最たる人物が僕の父なのですが、父と大工たちが会話するところを横で聞いていると・・・。
「アレおめ・・・どした」
「んにゃ、なあも・・・」
「アレあっこにあったっしょ」
「んじゃない?」
「べ~?」
父は福岡出身ですが訛りとかは特にありません。とにかく言葉数が少ない会話。必要最小限で伝達する青森弁のような会話。アレやソレが多く、お互いに何言ってるかわからず聞き返してることや、今絶対聞き取れてなかったのに適当に返事した!ってのも多かった。
これ、僕は大工が一日中一人で黙々と仕事をしていることと関係があると思ってます。自分でも気が付くのですが一日中一人でいる時間が長いと、シンプルに寂しい気持ちもありますが、人と会話するのが億劫になってくるんです。
突然の電話。現場管理の来訪。他業種の職人の来訪。配達員。みんなピリッとくる。
よくないよ~。よろしくないよ~。
人間適度なコミュニケーションは必要だなって結論で!