多能工の真実
元々は工場の生産ラインで複数の作業をこなす人を意味したそうですが、昨今は建築業界でも「多能工」という言葉は使われています。「万能工」って言ってる人もいる。
多能工・万能工、どっちでもいいけど、今回はこの言葉の意味について考えてみたい。
建築業界で「多能工」が使われるときはほぼ他称です。自ら「多能工」を名乗る人はいないし、いたらちょっとイタイと思う。「俺はなんでもやっちゃうよ」って言う元気な職人はたまにいるけど「俺は多能工だから」なんて言い出したらほとんどギャグ。笑うしかない空気になる。
なぜか。おそらく「多能工」とか「万能工」って言葉を言い出したのが職人の買い手側だからでしょう。売り手である職人が使いだした言葉ではない。
買い手市場である建築業界では仕事を最終消費者から頂いてくる元請け業者が職人よりもどうしても立場が上になります。これは仕方ない。だってここでは明白にタマゴよりニワトリが先っていう答えが出てるから。
ところが、職人が少ないのも事実なので元請けは困るわけです。仕事があっても職人が少ないと現場が回らない。管理側は職人の手配が一番大変だったりします。ここで求められたのが「職人の多能工化」ってわけです。
ガスもいじれる設備屋。弱電もいじれる電気屋。キッチンが組める大工。電気もいじれる大工。ユニットバスが組める設備屋。養生もやってくれる解体屋。などと買い手側が頭数が少ない職人に求める作業がどんどん増えていく。
そこで「多能工」って呼称が使われるようになった。
「多能・万能」って言うまでもなく何でもできるって意味です。けどこれ、買い手側が使ってる限り「何でもやってもらう」になっとるよ。
ハッキリ言ってしまえば「雑用」に近い。ていうか「雑用」の語感をスマートにしてトトンッと太鼓を叩くために「多能工」は使われています。すくなくとも建築業界ではね。
職人の同志たちよ。「多能工・万能工」を定着させたらアカン! 何でもやらせておいてしくじったらケツはまわってくるぞ!
万が一、元請けとの関係維持のためや仕事上自分の領域外の作業を請けざるを得ないときはしかるべき金額を請求しましょう。
元請け業者は本職に頼むより安く済むという色気を出して「多能工化」を求めてきます。
金は出さない、責任はとらないってさ。虫が良すぎないかい・・・。