大工っぽくないよね
親父がバッキバキの職人気質の家庭に育った僕は、必ずしもっていうか、ハッキリと大工になりたかったわけではない。だからかしら、言われて嬉しい言葉があります。
「大工っぽくないよね」。これです、これ。
お! わかる? そうなのよ~、元来大工気質じゃないのよ僕は、がっはっはっは、と相手の肩をポンポン叩きたくなるくらいクル。
だがしかし、そもそも大工っぽさってなんでしょうか。
実家が工務店の僕は幼い頃から沢山の大工さんを見て育ちました。そんな僕の彼らに対するイメージは・・・
頑固で無口、口下手で粗野、怒りっぽくてアナログ人間、とまあ良いもんじゃないのよね。更に見た目は筋肉質でずんぐりむっくりのねじり鉢巻きが似合うおじさん達。
こんなイメージが子供の頃から染みついています。ですから「大工に見えないよね」とか「大工さんらしくないよね」なんて言われると嬉しいわけです。
ところが他人に「半人前」だとか「大八」だとか言われると、冗談でも腹が立ってしまう超絶身勝手な僕なのだ。
大工っぽくない都会的な洗練さを持ちながら、大工としては一人前の職人、こんな風に見てほしい。
だけどアーバンでソフィスティケートされた一人前の大工、って言い換えると気色が悪いな。そもそも「大工」っていう単語が強すぎるんだよね。なんかドスーンと重たい。
ならば「木工」にしてみたらどうだろうか・・・
「アーバンでソフィスティケートされた一人前の木工」
都心の私立高校に通う、美大志望の生徒の作品。西日に照らされた放課後の廊下でひときわ目立つ、割りばしを細かく組み上げて作ったインスタ映えしそうな馬。「え? このたてがみも割りばしなの?」みたいな・・・「木工」は却下。
「木工」だと軽くてふわっとしすぎで、なんか図工感でちゃうね。かと言って「匠」は気取ってて嫌なのだ。 某テレビ番組のせいで設計者のイメージがあるし。
「アーバンでソフィスティケートされた一人前の匠」
この人絶対オープンカフェでノートパソコン開いてるよ! そして黒縁眼鏡でアゴに少しひげがあるよ! お酒は週末にワインかクラフトビール飲んでるよ! くそ~、こちとら安ウィスキーで毎晩ハイボールだっつーの! これは大工の現実とイメージが乖離しすぎとる。
なんかビタッとはまるいい名前ないかなあ。「大工」の大を慎ましく小にして「小工」ショークとか・・・やめようやめようもうやめよう。偏見がすんごい。