大工、見て覚えろ!
職人の世界には「手元」という宙ぶらりん雑用の状態があります。大工にも例外なくある。
この「手元」を職人の補助作業とかサポートだなんて書いてあるのを見かけると、少しモヤっとするんだよね。
これ要するに、何もわからない新人に何をさせていいかわからないからとりあえず小間使いさせておくってだけですよ。
それを補助作業とかサポートって言っちゃうと、役目や立場として成立しちゃってる感じだから変だよ。「手元」って、まだ現場では役目を与えられていない状態のことですから。
職人気質の親方が入門したての新人に、何から教えてあげればいいのか、何をさせればいいのか具体的な教育方針がないから、とりあえず「手元」ってことにして雑用をやらせる。
んで、そんな親方連中は必ずと言っていいほどオキマリのこれを言うのだ。
「仕事は見て覚えろ!」
出たあぁぁ~~~!! 必殺職人ネグレクトぉおお!!!
マットを揺らした決まり手は、職人ネグレクトです。職人育児放棄。
「俺は不器用だから、何から教えてあげればいいのかわからないよ。だから雑用仕事をこなしつつ俺の仕事や手元を見て、頑張って自分で覚えてね」
って素直にやさし~く言われたとしても、かなり微妙。仕事に対する動機は多くの場合、生活の為に仕方なくであって、強いてその職業に就きたいって思ってる人なんて稀有だからね。
そこへきて見て覚えるなんて、モチベーションがかなり高くないとつらい。絶対に教える側にも問題あるのに、貴重な入門者に対してこれじゃあアカンよ。
何から始めれば良いか分からないのであれば、教える側と教わる側の相互理解を深めるために、愛情のあるコミュニケーションをとることから始めるべきだと僕は思います。相手に話しかける、相手の話を聞くって愛情ですからね。
かくいう、僕の父も「見て覚えろ」型の大工でした。なので、思い切って一度言い返してみたことがあります。
「え、じゃあ親父は俺がギター弾いてるところをずっと見てたら、ギターが弾けるようになるの?」
親父、絶句だったよ。なんかカブトムシのお腹側を見た時みたいな顔になっちゃってた。
ドラ息子でごめんね。あいや、ギターだからギタ息子か。
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