大八ですけど喰えてます。

大工になりたくなかった大工のブログ。階段作れない、和室作れない、大八ですけど喰えてます。

常用はつらいよ

優し顔常用はつらいよ

 

「常用」とは、日雇いのことです。

 

 一般的には聞きなれない言葉だと思うので、少し説明すると。

 

 リビングの古い建具を新しい建具に取り換えるとか、洗面所の床がぶかぶかだから部分補修するといった一日で終わるような仕事や、どれくらいの手間で終わる工事になるか見通しの立たない仕事などに「常用で一人工ニーサンで、二月の第三週から予定空けといて」・・・こんな感じに使います(ニーサンは二万三千円のことです)。

 

「人工」とは「ニンク」と読み、職人一人の一日分の労働力の単位です。あくまで一日分ですから若くてエネルギッシュな職人が人一倍働いたとしても、二人工になることは絶対にありません。そして、職人の一日は概ね朝8時くらい〜夕方17時半くらいまでだよね、という了解事項があります。

 

 常用で人を雇う場合、一日で終わるような仕事もそこそこ期間が必要な工事でも雇う側の考えは一つ「少ない人工で、できるだけ多くのことを手早くやらせたい」と考えます。丁寧な仕事や綺麗な仕上がりは大前提として暗黙の了解になっています。

 

   でね。雇われる側は少し違って、一日で終わるような仕事の場合「とっとと終わらせて帰りたい」と思っていて、そこそこ期間が必要な工事の場合「次の現場が始まる(or入る)までのんびりやりたい」と思ってます。

 

   齟齬ってますよね。

   互いの腹の中をもう少し見てみると・・・

 

 一日仕事の場合

雇い主「あの内容だと、13時には終わっちゃうな。17時まで時間あるからアレもやってもらうか、それとも別の現場に行ってもらおうか」

雇われ側「この内容だと、13時には終わっちゃうな。半日分しか貰えないかもしれないし、別のこと頼まれるかもしれないから15時半まで引っ張ったらとっとと帰ろう」

 

 そこそこ期間が必要な工事の場合

雇い主「予算も決まってるし、あまり人工かけたくないな。時間いっぱいバリバリ働いてもらわないとね」

雇われ側「どうせ常用だから急いて頑張る必要もないか。休憩もちゃんととって気楽にいかないとね」

 

    てなわけで、デキる現場監督は職人と現場打ち合わせのときや、現場の様子を見に行くときは休憩時間や終業時間を狙って行くわけです。職人の手を止めちゃうと損ですからね。

 

 こっちとしてはたまらんですよ。お弁当食べて昼寝してたら「お疲れさんでーす!」とか、今日もチカれたびーさあ帰ろうと思ってたら「ごくろうさんでーす!」と来るんですから。

 

 この話を大工仲間や他業種の職人さんにすると大いに盛り上がります。女子高生が先生の噂話をするノリとほぼ変わらないと思う。

 

 でもね。職人側も年間単位の売り上げを伸ばすためには常用の現場も早く終わらせて、請負の現場に行かないとダメです。本当はこらえて頑張る方が得なんですね。

 

 ほんで。雇い主も職人に見透かされてるから、せめて「休憩中に申し訳ない」くらいの一言は入れましょうよ。

 

 表向きはべったり馴れあってるのに別の場所では愚痴りあってるのを見るのは嫌なもんですし、精神的にもよくないです。我々は持ちつ持たれつですしね。

 

 この辺の手の内をしっかり話し合える関係になれば、互いの利益にもなるし、スムースでいい仕事にもつながって、結果お客さんも喜ぶと思います。

 

  とまあ、綺麗にまとめるとこんな感じですけど。本音は「昼とか17時にワザとらしく来るんじゃねえっ!」と、言ってみたいです。は~まったく、常用はつらいよ。

 

 

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