大工、おヤクザ入門
人として大切なことを沢山教えてくれた産廃営業部の先輩Yさん。実はそのYさん以上にクセの強い人物だったのが、もう一人の先輩Kさんです。
Kさんはすんごい特殊。このような人物は一般的な企業内では存在しないでしょう。てか、存在したらアカン。産業廃棄物処理業っていう業界ならではの人物じゃないかと思います。
Kさんは元ヤクザ。ね、ほんとにそんな人いるのかよって思いますよね。けど実際、Kさんは全身に見事なもんもんが施されている(らしい)ため、真夏でも長袖の作業着を脱ぐことはなかったのよ。
会社の健康診断は、他の社員に見られぬようにKさんだけ特別枠。Yさんが一緒に行ってた。だから、Yさん以外にKさんの入れ墨を見た人はいなかった。
もちろん、社員旅行にもKさんは絶対に来ず。会社もそれについて何にも言わない。Yさんは僕に「営業部は社員旅行を盛り上げる側だからな!」なんて言ってたクセにさ。
Kさんの見た目は強面というわけではなく、パっと見は普通の職人あがりのお兄さんって感じ。だけどハッキリと影があって、物静かで、イメージは無口な浪人。
僕は当初、Kさんをめちゃくちゃ胡散臭い仕事のできない人だと思って見てました。
会議にはいっっっつも遅れてくるし、何にも発言しないし、新規の取引先を見つけてくるわけでもない。この人毎日何してるんにゃろ? と疑義の念をギギギ~って抱いてたよね。
ある日のこと、Kさんと一日行動を共にしてこい、と会社からお達しが出たんです。その理由はKさんが担当していた建物解体の現場を見てこいというもの。
あ~なるほど。Kさんは解体の営業だったのね。てなわけで、Kさんと僕のドキドキドライブデートが始まったのです。ブロロロ~ン!
「俺はなア、金にも女にも困ったことなんて一度もねェよ。もしお前が金に困ってんなら、いつでも言ってこいよ。おめえ年上の女は嫌か?」
へ・・・? この人は何を言ってるの・・・?
「おめえよオ、これから現場に行くってのに革靴なんて履いてちゃダメだろ。とりあえず靴買いにいくゾお」
え? あ、はい・・・。
ということで、僕はKさんに言われるがままに車を走らせました。ほどなくして、Kさん行きつけの大きなホームセンターに到着ぅ~。あら、レストランなんかもあるじゃない♪
「スニーカータイプの安全靴がいいんだよ。好きなの持ってこい」
まじ? え? いいんですか?
「おまえ、ここのハンバーグうめえんだよ。くおうぜくおうぜ」
いやいや、お金出します出します。ここは僕出します。靴まで買ってもらったのに悪いっす。
「おい! あんまバカなこと言うなよ」
・・・・・・はい。
というわけで、僕は初日から見事にアニキと子分図式に瞬殺で引き込まれてしまったというわけであります。
おヤクザ式のマウント術、おそるべし・・・。
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